前職はインターネット広告代理店だったということもあり、業務量が多く、残業が日常化された環境でした。
同様に効率化という言葉は現場からも、偉い人達からも日常的に使われていました。
しかし実際に効率化という取り組みの中で起こりうる課題を理解しないまま進めてしまうと、結果的に効率化されないという事象は多々起こります。
今回は自分がいままで効率化してきた経験をもとに、効率化に潜む落とし穴について紹介したいと思います。
そもそも効率化とは
業務効率化とは、会社の仕事を進めるためのプロセスから無駄なものを省き、よりスムーズに業務ができるような状態にすることで、生産性を高めていく作業のことです。
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今日の働き方改革においては、効率化は切っても切り離せない関係にあります。
働き方改革によって業務時間が短縮することは非常に素晴らしいことではありますが、それにより生み出す価値が減少してしまったら元も子もありません。
より具体的に話すと、今まで12時間かけて生んできた100の成果を、業務時間を4時間短縮することにより66の成果になってしまった場合、その企業の業績は当然下がってしまいます。
もちろん残業代や、実は66の成果でも顧客満足度が変わらない可能性も加味する必要はありますが、一般的にはこのような結果になることは多いでしょう。
そんな中で、この状況を組織の責任とする人が多いように感じます。
- なんでこんな業務量をこなさないといけないんだ
- なんでこのフローは整っていないんだ
- なんでこの時間にこんな無茶な依頼がくるんだ
こんなストレスは働いていれば少なからず感じるはずです。
しかし、それはすべてが組織の責任ではなく、自分の責任も少なからずあると僕は考えています。
例えばこの記事でも紹介しましたが、普段パソコンを使う仕事をしている人でタイピングスピードが遅いのは、一つの欠点だと思います。
もっと早くすることができる目の前のことに取り組まないということは、その人に責任があると言ってもおかしくないですよね。
しかしこれは非常に分かりやすい例です。
今回紹介するのは自発的に、もしくは組織単位で効率化しようと取り組むことに対する指摘です。
そういった取り組み自体は素晴らしいことだと思いますが、やり方を間違えてしまうとかえって非効率になると感じることが多々ありました。
その代表例を3つ紹介したいと思います。
効率化の落とし穴と解決策
インパクトが小さい効率化
恐らく多くの人が認識しているにも関わらず、陥りがちなのがこの例です。
毎日10分かかる仕事を1/10にすることができました!
1/10という数字から一見凄そうに見えますが、実際に短縮できた時間はたったの1日9分です。
1ヵ月20営業日だとすると、1ヵ月たったの3時間。
例えばそのソリューションを完成させるために9時間かかったとしたら、その効率化による回収は3か月後になります。
インパクトが小さい上に、目に見える成果が生まれるのにも時間がかかります。
これはあまり良い効率化だとは思えません。
ではこのような状況の時、どうすればよいでしょうか。
答えは簡単で、自分の業務の棚卸をしましょう。
そして、当然ながらその棚卸し作業に時間はかけないでください。
自分の場合、支障が出ない範囲で何時から何時まで何の仕事をしていたのかメモりながら業務にあたっていました。
あくまで前職での例ですが、確かこんな感じになったと思います。

自分の場合、多くの時間を打ち合わせ用資料に費やしていました。
そしてこの状況の中で、更なる落とし穴が存在していると考えています。
- 主業務を削減しようという思考に至らない
- ミスした時のリスクが多い業務のケアをしたがる
1については、「これは今までこうやってきた仕事だから」と、そもそも効率化しようという考えに至らないパターンです。
そして2は、ミスった時にクライアントに怒られる可能性があるものや、所属している組織にとってマイナスに働くものに意識がうつるパターンです。
これは持論ですが、ミスはいかなる可能性で起こりえます。
そのミスを起こさないようにするためには、ミスが起こらないフローを整えるのではなく、ミスが起こらないように時間の余裕を持つことの方が近道だと思います。
そのため自分の場合は、この打ち合わせ用資料の作成を最小限にしました。
それまでキッチリ資料を作成していましたが、何度か打ち合わせを重ねながら、クライアントにとって必要な情報だけを載せた資料へと改変していきました。
そしてそのスタイルに至るためには、情報が少ない資料でのプレゼンスキルが必要です。
自分は決してプレゼンが上手い人間ではありませんが、クライアント理解やプロダクト理解を深めていたため、的外れな発言をすることは少なかったと思います。
やはり効率化を進めるにあたって個のスキルは切り離せない問題だと思います。
多くの人を巻き込むこと
2つめは多くの人を巻き込むことです。
多くの人を巻き込むことは「インパクトが小さい効率化」の部分でも少し話した、投資対効果を下げることにつながります。
組織的な課題を解決するときは、各方面の専門家があーだこーだ言って完成されたソリューションを作り出そうとします。
その議論においても、実際にそれを生み出す工程においても時間がかかります。
効率化をするにあたって忘れがちなのが、この掛かった時間についてです。
多くの人を巻き込むことは、それだけ多くの人の時間を少しずつもらうことになり、結果として投資対効果が低くなる傾向にあるとおもいます。
では、こういうケースの場合どうすればいいのか。
答えは単純で、関わる人を減らすことです。そのままですが。
「それでは多種多様な組織的な課題を解決できない!」と思われがちですが、そもそも多種多様な課題を解決する必要はありません。
まずは限定的でも良いので、1つの大幅な効率化を成功させることが大事だと思っています。
そしてその成功を汎用化させるプロセスで、各方面の専門家に出てきてもらえばいいのです。
なぜ一度成功させる必要があるのかというと、一度成功させればそのソリューションの価値やユースケースが分かるため、汎用化させるときに必要以上の専門家を呼ぶ必要がなくなるためです。
いきなり大掛かりなプロジェクトを発足させてしまうと、中には関係のない人が参加してしまうこともあります。
そんな人は謎の30分のミーティング時間を無駄にしてしまうのです。
not 効率化。投資対効果を下げる要因になりますね。
分かりづらいソリューションにする
3つめは汎用性についてです。
「仕組みはよく分からないけど、なんか早くなる」みたいなパターンです。
どういうことが起こってしまうかというと、引継ぎや仕様変更があった時に正しく継承されないため、後任の人がその仕組みを読み解く時間がかかってしまいます。
これも効率化だと思ったら、かえって目に見えない部分で時間がかかっているケースですね。
つまり、効率化に関するソリューションは保守管理コストが低い必要性があるということです。
保守管理コストを低くすることは、そう簡単なことではありません。
しかしエンジニアたちの中では、保守管理コストを下げるため取り組みは既に行われているのです。
それはコメントアウトですね。
世の中の99.9%のエンジニアはコメントアウトをしています。
端的に言えば「このプログラムはどんな処理をしているのか」をメモすることです。
では非エンジニアにとって、コメントアウト的なことはどんなことをすればいいのか。
それは情報の整理と、最適な解決策を明示してある状態をつくることだと考えています。
- なぜそれをするのか
- どういうアウトプットがほしいのか
- そのアウトプットはどう使われているのか
これらが整理されていれば、引き継いだ人も何をすべきかが明瞭です。
そしてその答えは、できるだけシンプルである必要があります。
また逆に、このことを整理する過程で「そもそもこれって必要なんだっけ?」という無駄への気づきにもつながります。
多くの場合、使いづらいソリューションは、そもそも無駄な作業であることが多いです。
まとめ
ということで、効率化をするにあたり陥りやすい3つのポイントとそれぞれの解決策について、簡単ではありますが紹介をしてきました。
1つめは、インパクトが小さいことはやらない。
重要なことは「今までやってきた業務だから」「ここをしっかりしないとリスクだから」という固定観念は捨てるということです。
2つめは、多くの人を巻き込まない。
多くの人を巻き込むことで、多くの人の時間を使うことにつながります。
自分の場合は信頼できるエンジニアと手を組んで、小規模で進めて成功した後、多くの人に広めることがベストプラクティスでした。
3つめは、分かりにくいことはやらない。
分かりにくいことは、そもそも必要性が低いことがあります。
解決すべき問題と、現状を整理したうえで、誰もが使える簡単で最適な解決策を導き出しましょう。
Let’s 効率化。がんばろうニッポン。