ネット広告代理店のフィービジネスについて

本記事はあくまで僕個人の考えであり、自分が属している組織の見解ではありません。

また現職を通じて感じたことではなく、前職のときから感じていたことということをご認識ください。

(とはいえ、ある程度自分の立場もあるので、不適切な記事だなと感じたら消す予定です)

運用型広告代行ビジネスの実態

ビジネス概要

ネット広告代理店の売上の多くは、この運用型広告代行で成り立っています。

もちろんクリエイティブ制作や、ツール提供などもあると思いますが、売上においてはこのビジネス領域が一番だと思います。

そしてその多くが、運用額に手数料をかけるモデルです。

例えば1000万円Google広告を出稿した場合、その金額に20%のせて1200万で請求します。

実際はクライアントが組んだ予算に合わせて配信をするので1000万の予算だと20%で割って、約833万円分の出稿をします。

そのため手数料が20%だった場合、仕入れ値などの細かい話を置いとくと、粗利率は大体16%くらいになります。

この粗利率から分かるように、運用型広告代行事業は決して粗利率が高い事業ではありません。

(一方でバナーや動画、LPなどの制作物は粗利率が高い傾向にあります。)

代理店側の悩み

そんな粗利率が低い事業において、運用型広告という商材は非常に厄介です。

配信金額はその時のオークション状況によって変わるため、1日の配信費用には常に波があります。

具体的にどう厄介かというと、1000万の予算に対し、1050万配信しちゃった!なんてことが発生します。

これはネット広告代理店が最も恐れることの1つ、予算超過です。

多くの場合、予算超過をしてしまうと補填が発生します。

マージン20%、1000万の予算の中で、1050万配信してしまった場合、本来の粗利は約167万円になるのですが、50万円の超過補填として、手元には117万円しか残りません。

こうなるとネット広告代理店の粗利率はますます下がります。

しかも20%のマージンはかなり高い方で、大企業だと10%を切るマージンで契約をしている企業もあります。

そのためネット広告代理店の月末はシビアで、場合によっては最終日に広告の配信量を大幅に下げることがあります。

代理店は何より、予算超過による補填が怖いのです。

クライアント側の立場では

一方で広告主側は、そんな代理店の気持ちは関係ありません。

そういった契約で発注をしているので広告主としては関係なく、ただ商材が代理店からして厄介なだけなのです。

そして広告主としては、ネット広告代理店の手数料をできれば下げたいと思っています。

こういった検討は、出稿金額が大きければ大きいほど発生します。

なぜなら手数料ビジネスにおいて、発注金額が大きければ大きいほど手数料も高くなるためです。

同じ料率で出稿金額が1000万円と1億円とでは、手数料は約1500万円も変わってきます。

そして凄い細かい話ですが、代理店側が月末にかけて配信を調整、もしくは停止すると広告主のビジネスで機会損失が発生します。

運用型広告が占める売上割合は大体20%〜30%、よりダイレクトレスポンス型のビジネスであれば50%超が広告経由ということもあります。

そんな中で代理店都合で月末の調整をされたら、売上低下につながってしまいます。

多くの広告主はこのことを黙認しますが、なんだか代理店はプロじゃないなあと時折思いますし、自分も毎月プロフェッショナルにできませんでした。

代理店のビジネスモデルを変革!

変革!といっても、ぼくにそんな力はありません。

単なる希望です。

人月での発注

聞いた話によると、海外ではネット広告代理店よりメディアの立場が強く、代理店はリソース屋として考えられることが多いそうです。

(本当かどうかは知りませんが)

確かに自動化・機械学習によって日本のネット広告代理店の役割は、プロフェッショナルな運用、クリエイティブ制作から、多数のメディアバイイングとマネージメントにシフトしていっているように感じます。

そのような仕事は、発注金額が高くなればなるほど仕事の難易度やリスクが伴う、手数料ビジネスがマッチする業態とは思えません。

必要な業務に対して、必要な人数を割り当てる人月での発注の方が理にかなっています。

アクセンチュアをはじめとする、IT系ビジネスコンサル会社が恐らくこの発注方法をとっていますが、まだ日本ではほとんど浸透していないように思えます。

この方法がなぜ良いかというと、広告主側としてハンドリングするため予算に対する融通が多少きくようになるのと、

出稿金額が高くなろうと、一定の金額で外のリソースを使うことができるからです。

※予算に対する融通は妄想。

超過してもOKにする

四半期で予算組みをして、四半期予算としてネット広告代理店に発注すれば、予算超過と月末の売上縮小リスクは下げることができます。

でも今回はそういうことではありません。

超過を許すのは広告主側ではなく、ネット広告代理店側です。

代理店としては、予算消化率が100%に近ければその分売上があがるので、できるだけ100%に近づけます。

逆を言えば予算消化率が95%だと、その分売上が下がってしまいます。

予算1000万の場合、予算消化率100%で粗利は前述の通り167万円になります。

一方で予算消化率95%だと、粗利は158万円になります。

つまり予算超過率95%と、9万円超過して1009万円配信した時では粗利は同等になるのです。

経営上は粗利率・利益率が下がるので、株主にとっては良くないことですが、

  • 従業員の精神的安定が得られる
  • 広告主の月末の落ち込みが防げる

これらのことが実現できるなら、超過を許容する組織にした方がいいと思いました。

そして暴論ですが、95%をボーダーラインとして、98%以上100%未満の配信ができた広告チームには、その範囲内の粗利をインセンティブとして出す。みたいな会社があっても面白いなと思いました。

(予算1000万で100%着地できれば、4万円のインセンティブになります。)

担当する広告主の規模によって不平等は発生してしまうので、多少制度は考える必要がありそうですが。。例えばジョブレベルに応じて上限額を決めるなど。

そんな暴論はさておき、多少の超過は許容する組織づくりは必要だと思っています。

もっとポジティブな社会に

今の会社では、自分はかなりポジティブに働けています。

月末の補填もなければ、超過して会社・クライアントに怒られることもありません。

失敗の恐れがないだけで、こんなにも伸び伸びと働けるんだなと思っています。

正直いまのネット広告代理店のビジネスモデルは、社会にとっても、従業員にとっても不健全だと思っています。

本当はその不健全さを、前職で変えてやりたかったんですが、自分の力不足によって実現できませんでした。

不健全さを是正するのではなく、もっと前向きになれる社会・組織であってほしいなと思います。

世の中の「不」をなくしたいと起業した後輩に、なんか思想が似てるなと我ながら思いました。